人生何があるかわからない。
これは、京都に住んでいた美大生時代の話。
『働く人』というテーマで課題が出され、
私は、なぜだかわからないのですが、
パッと、『お巡りさん』が頭に浮かびました。
大学の授業が終わると、その足で交番へ。
ところが、お巡りさんは、パトロールに出ているのか留守でした。
ずっと待っていると、お巡りさんが2人、
自転車で私の目の前を通り過ぎようとしました。
「すいませんっ!」と呼び止め、
「大学の課題で『働く人』という絵を描かなくてはいけなくて…
ちょっとスケッチさせてもらえませんか?」と、お願いしました。
「ごめんなぁ。パトロールせなあかんねん…。
あ、でも、警察署やったら、
警察官いっぱいおるから行ってみたら。」
「ありがとうございます!」
と、いうことで私は警察署に向かいました。
そして、私は着くや否や何もためらう事なく、
免許交付コーナー前に並んでいる長椅子に腰をかけ、
お巡りさんをスケッチ。
2時間程たった頃でしょうか、
「何してんの?」と、ひとりのお巡りさんが声をかけてきました。
「絵を描いてます。」と、
青だから横断歩道を渡ってますけど、何か?ぐらいの感じで、
「絵を描いてます。」と、答えた私に、
お巡りさんは、怪訝な顔をしました。
その表情を見た瞬間、あれ?ダメだった??と、思った私は、
慌てて、大学から出た課題のこと、さっき会ったお巡りさんのことなどを話しました。
すると、そのお巡りさんは、
「そうか、そうか。」と、言って署長さんから絵を描く許可を取ってくださいました。
でも、そこはさすがお巡りさん。
学生証のコピーは「念の為に、な。」と、取られましたが。
今だとインターネットで検索すれば、
何枚もお巡りさんの写真や動画が見られますが、
インターネットが普及しはじめた頃。
私は、2週間程その警察署へ通い、スケッチし続けました。
そして無事、絵を描き上げることができ、
大学の課題を提出することができました。
課題提出後、課題よりひとまわり小さい絵を1枚、
警察署にプレゼントしました。
みなさん大変喜んでくださり良かった〜と、思っていたら、
その話が京都府警の本部の方にも伝わったようで、
ある日、京都府警から大学に電話がありました。
「うちの学生、なんか悪いことしました!?」と、
電話を受けた職員さん、背筋が凍り、汗かいたそうなのですが、
私への機関誌表紙絵の依頼電話でした。
ということで、京都府警機関誌の表紙絵を1年間担当させていただきました。
色んな所でお騒がせスイマセン…の学生でした。
京都府警機関誌『へいあん』
つけペン(カブラ)を使っていたのが懐かしい。
色は、今も使っている水彩絵具(Winsor&Newton)で着彩。
*この投稿トップにあるイラストは、京都タワー。
イラストレーターデビュー10周年の時に描いた作品、
『パーティーのはじまりはじまり』。